転職エージェントをはじめて利用する方に、転職エージェントの仕組みを7つの項目から解説していきます。
「転職エージェントの仕組みを教えて!」
「転職エージェントの転職支援サービスって、どんなサービス?」
「キャリアアドバイザーって、何をしてくれるの?」
「転職エージェントが紹介してくれる求人には、どんな特徴がある?」
「転職エージェントは、どうして無料で使えるの?」
はじめて転職エージェントを使う時は、わからないこと、気になることがたくさん出てきます。
この記事を読めば、転職エージェントのサービス、あつかう求人、利用方法が網羅的にわかり、安心して転職エージェントが利用できるようになるはずです。
目次
【仕組み解説1】転職エージェントが提供する転職支援サービスとは?
転職エージェントは、転職したい人(求職者)と、社員・職員を採用したい企業や組織との間を取りもち、転職を支援するサービスです。
このサービスは転職支援サービス、人材紹介サービス、職業紹介サービスとも呼ばれ、このサービスを運営する企業を人材紹介会社、職業紹介事業者と言います。
求職者が経歴や実績、スキル・技術、希望を伝えると、転職エージェントの担当者は求職者にぴったりの求人を探して紹介し、転職が決まるまで転職相談、自己PR・志望動機や履歴書・職務経歴書作成のアドバイス、求人企業への推薦、面接対策、待遇交渉などで転職活動をサポートしてくれる便利なサービスで、無料で利用できます。
- 求職者に対する転職エージェントのサービス
- 転職エージェントは、求職者の求職の申し込みを受け付けます。
- 求職者の経歴や実績、スキル・技術、希望にマッチする求人を、求職者に紹介します。
- 求職者が転職したいと思うような求人が見つかれば、面接を設定します。
- 企業や組織に対する転職エージェントのサービス
- 転職エージェントは、企業や組織(求人者)の求人の申し込みを受け付けます。
- 求人の仕事内容、人材要件にマッチする求職者に求人を紹介して、求人に応募する求職者を求人者に紹介します。
- 求人者が採用したいと思うような求職者が見つかれば、面接を設定します。
転職エージェントという事業の中で、特に重要になってくるのが情報です。求職者、求人企業には、それぞれ希望や要件があります。
転職エージェントはこの希望、要件といった情報を活用して、求職者と求人企業との間を取りもち、より良い雇用関係がうまれることを目指します。
ちなみに、法律では転職支援サービスのことを職業紹介といい、職業安定法(第4条第1項)では、次のように定義しています。
この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。
転職エージェントをはじめとする職業紹介事業は、誰でも運営できるわけではありません。運営するには、厚生労働省(厚生労働大臣)の許可が必要となります。
【仕組み解説2】転職エージェントが紹介する求人の特徴とは?
転職エージェントは、さまざまな業種、職種、地域の求人を紹介してくれます。一方、あつかう求人の雇用形態は正社員が中心で、契約社員の求人が一部あり、パート・アルバイト、派遣の求人はほとんどありません。
求職者が希望条件を転職エージェントに伝えると、希望にあう求人を探し出し、紹介してもらえます。紹介される求人の中には、転職エージェントに登録することではじめて紹介してもらえる非公開求人もあります。
- 非公開求人
非公開求人は、社員・職員を採用したい企業や組織が、公に募集していない求人です。転職エージェントを利用することで紹介してもらえる求人で、転職エージェントが保有する求人のうち50〜80%が非公開求人になります。求職者の経歴やスキル、希望条件などが、採用したい企業や組織の条件、要件に合致する場合、転職エージェントから求職者に非公開求人が紹介されます。
求人を非公開にする理由や背景には、次のようなものがあります。
- 急いで経験やスキルがある人物を採用したい
- 社内で人材を育成する時間、能力がない
- 社内外に秘密裡に採用活動を進めたい
- 中途採用業務を転職エージェントに一任し省力化をはかりたい
その他にも、企業と特定の転職エージェントの間に太いパイプがあって、中途採用業務をアウトソーシングの形で一任されている転職エージェントもあり、このようなケースでは求人が公開されることはほとんどありません。
また、転職エージェントは求人情報量の豊富さも魅力です。
2015年6月、私は国内最大の転職エージェント「リクルートエージェント」と、国内最大の転職サイト「リクナビNEXT」を運営する、人材サービス業界最大手の株式会社リクルートキャリアの社員の方からお話を聞く機会を得ました。
このお話をもとに、転職エージェントが持つ求人情報の量についてお伝えします。
転職サイトと転職エージェントでは、どちらがたくさん求人情報を持っているかご存知でしょうか?
リクルートキャリア社の例で言えば、答えは転職エージェントです。
社員の方からお話をうかがった時点で、転職サイト「リクナビNEXT」の掲載求人数は3,000件以上あるということでしたが、転職エージェントサービス「リクルートエージェント」は非公開求人だけで9万件ありました(注)。非公開求人数に公開求人数を加えると、リクルートエージェントの求人数は優に10万件は超えます。
※注:2020年12月30日時点の「リクナビNEXT」と「リクルートエージェント」の求人数をお伝えします。「リクナビNEXT」の掲載求人数は48,287件、「リクルートエージェント」の公開求人数と非公開求人数の合計は236,281件となっています。
【仕組み解説3】転職エージェントのキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーの役割は?
大手の転職エージェントの担当者は、求職者の転職活動を支援するキャリアアドバイザーと、企業や組織の採用活動を支援するリクルーティングアドバイザーに分かれています。
求職者が接することになるのは、キャリアアドバイザーです。
キャリアアドバイザーは、求職者の転職支援を担当する人材紹介会社の社員です(コンサルタント、キャリアパートナーなど別の呼称を使う人材紹介会社もあります)。
キャリアコンサルタントという名称もありますが、キャリアコンサルタントはキャリアコンサルティングの国家資格を持つ人だけが名乗れます(参考:厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」)。キャリアコンサルタントの資格を持つ、人材紹介会社の社員もいます。
なお、中規模・小規模の転職エージェントの担当者は、キャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザー両方の役割を兼務しているケースもあります。
ここでは、大手転職エージェントのキャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザーの役割をご紹介します。
キャリアアドバイザーの役割
キャリアアドバイザーの仕事は、次の通りです。
- 転職エージェントのキャリアアドバイザーの仕事
- 求職者の経験・スキルや希望の確認
- 求職者の転職、キャリアデザインに関する相談
- 求職者への転職に関する情報提供、求人企業の紹介
- 求職者の応募書類や面接、退職に関する助言
- 求職者の面接日、入社日、待遇面の要望確認
求職者はキャリアアドバイザーとの対面形式の面談、電話、メール等によってコミュニケーションを取りながら、転職活動を進めます。
キャリアアドバイザーとコミュニケーションを活性化させ、信頼関係を構築することが、転職活動を円滑に進めるにあたり肝となります。
滅多にあることではありませんが、相性が悪いキャリアアドバイザーが担当になってしまうこともありえます。
大手の転職エージェントでは、万が一このような問題が起こってしまった時の対策として、利用者の希望によりキャリアアドバイザーを変更できる制度を設けています。実際に利用することは先ずない制度ですが、このような制度があれば安心につながりますね。
中規模・小規模の転職エージェントでは、担当者そのものが少なく、担当者を変えられるところは多くありません。
転職エージェントのキャリアアドバイザーについては次の記事にも書いていますので、あわせてご覧ください。
リクルーティングアドバイザーの役割
リクルーティングアドバイザーの仕事は、簡単に言うと求人企業の営業担当者です。
- 転職エージェントのリクルーティングアドバイザーの仕事
- 求人企業への定期訪問、情報収集
- 求人企業の新規開拓
- 求人企業の求人票作成
- 求人企業への人材紹介、応募手続き
- 求人企業との面接日、入社日、待遇面等の調整・交渉
求人企業への応募手続きは、リクルーティングアドバイザーを介して行われ、リクルーティングアドバイザーは求職者の応募書類を確認し、求人企業の要件・要望を満たさない求職者をふるいに掛けることもあります。
リクルーティングアドバイザーと求職者が、顔をあわせる機会は少ないと思います。私がこれまでリクルーティングアドバイザーと会ったのは、内定が出た直後、内定を辞退した時、転職を決心した時ぐらいです。
このように求人企業に対して、お金を請求できるか否か大きな影響をおよぼすタイミングで、リクルーティングアドバイザーが登場することが多いようです。
【仕組み解説4】転職エージェントの運営体制は?
一般的に、転職エージェントは、企業規模で社内体制、対応領域が変わってきます。ここでは転職エージェントの運営体制を解説します。
分業制の転職エージェントと両面制の転職エージェント
大手の転職エージェントでは、前述したキャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザーのように、求職者と求人企業の担当者が分かれています。これを分業制と呼んでいます。
一方、中規模・小規模の転職エージェントでは、求職者と求人企業の担当者を兼務することが多い傾向にあります。これを両面制と呼んでいます。
例えば、社長1人だけで社員がいない転職エージェントもあり、このような企業の社長は、必然的に求職者と求人企業の担当者を兼務しなければなりません。
なお、大手転職エージェントの中でも、エグゼクティグ・管理職などのハイクラス層の人材紹介を専門とする部署では、両面制となっているケースは珍しくありません。
次に、求職者の立場から、分業制と両面制の長所、短所を見てみましょう。
長所 | 短所 | |
---|---|---|
分業制 | +担当者は求職者に集中し、求職者優先で対応する +紹介してもらえる求人の範囲が広く、量が多い | +担当者は求人企業と接点が少なく、求人企業を深く知らない +社内の情報共有が不足すると、紹介される求人のミスマッチが起こりやすくなる |
両面制 | +担当者は求人企業と接点が多く、求人企業を深く知っている +担当者から紹介される求人に、ミスマッチが少ない | +担当者は、求職者と求人企業のバランスを取りながら対応する +紹介してもらえる求人の範囲が狭く、量が少ない |
分業制の長所と短所を裏返せば、両面制の長所と短所になります。
求職者が手厚いサービスを受けられるのは分業制のように見えますが、分業制ではキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーの緊密な連携、情報共有が必須となり、これができないと提供するサービスレベルは低下します。
総合型の転職エージェントと特化型の転職エージェント
次に転職エージェントがあつかう求人の対応領域から、大手の転職エージェント、中規模・小規模の転職エージェントの違いを確認します。
大手の転職エージェントでは様々な業種、職種、年代、地域の求人をあつかっています。これを総合型と呼んでいます。
大手の転職エージェントでは、IT、金融、製造などの業種か、人事、エンジニア、営業などの職種ごとに、社内の組織を編成していることが多いです。
一方、中規模・小規模の転職エージェントは経営資源が少ないので、企業として業種、職種、年代、地域などでターゲットを絞り、専門性を強みにしています。
ターゲットの絞り方は様々ですが、これを特化型と呼んでいます。
特化型転職エージェントでは、IT業界・金融業界といった業種、エンジニア・経理といった職種、第二新卒・20代・30代・管理職といった年代やポジション、関東・東海・関西といった地域といった切り口で、専門性を高めています。
総合型と特化型に優劣があるわけではありません。とはいうものの、あつかう求人の情報量は、圧倒的に総合型転職エージェントの方がが多くなります。
例えば、IT業界に特化した転職エージェントは何社もありますが、実際にIT業界の求人情報量が一番豊富な転職エージェントは、業界最大手のリクルートエージェントと言われています。
【仕組み解説5】転職エージェントを利用するには?
転職エージェントを利用するには、登録が必要です。登録は、転職エージェントの公式サイトにアクセスして、登録ページの入力フォームにプロフィールや希望条件などの情報を入力します。
転職エージェントの登録について詳しくは、次の記事をご覧ください。
転職エージェントに登録後、求職者は転職の専門家であるキャリアアドバイザーと、対面形式あるいは電話などの非対面形式で面談します。
面談後、求職者の経験・スキルや希望を把握したキャリアアドバイザーから、求人の紹介や転職活動のサポートが受けられるようになります。
求人を紹介されたら、興味がない求人は断り、希望がかなう求人があれば応募し、面接、内定、転職とすすみます。
- 転職エージェントの利用から転職までの流れ
- 転職エージェントの選択
- 転職エージェントに登録
- 転職エージェントと面談
- 転職エージェントから紹介された求人に応募
- 応募した企業・組織と面接
- 応募した企業・組織に内定
- 応募した企業・組織に転職
転職エージェントを利用する場合と利用しない場合の大きな違いは、転職エージェントを利用する場合は、内定が出るまで、求職者と求人企業が直接コミニュケーションすることが殆ど無いことです。
求職者と求人企業が直接会話するのは面接の場ぐらいのもので、それ以外の求人企業との連絡や交渉などは全て転職エージェントが介在することになり、求職者の肉体的・精神的負荷は軽減されます。
転職エージェントを利用する転職活動の流れ、手順について詳しくは、次の記事をご覧ください。
【仕組み解説6】転職エージェントが無料で利用できる仕組みとは?
さまざまな面から転職活動を支援してくれる転職エージェントですが、利用料などの料金は掛かりません。無料で利用できます。
転職エージェントの報酬の仕組みを簡単にご紹介します。求職者の転職が成功すると転職エージェントは、求職者を採用した企業や組織から成功報酬をもらうことになっています。
その額は、転職エージェントによって多少の違いはありますが、転職した人がもらう年収の20〜30%相当です。もちろん、求職者の年収から成功報酬が差し引かれるわけではありませんので、ご安心ください。
法律上も、転職エージェントは、原則として求職者から手数料や報酬を受けとれないことになっています(参考:厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業等」)。
このような仕組みによって、求職者は便利な転職支援サービスを無料で利用できるのです。
また、転職エージェントには、転職した人が数ヶ月といった短期間で退職してしまうと、受け取った成功報酬の何割かを、採用した求人企業に返金する返戻金の制度があります。
そのため、目指すことは求職者、求人企業、転職エージェントの三者が満足する転職。転職エージェントの社員は、求職者の経歴・希望条件と、求人企業の要望・要件がマッチする求人を探しだし、求職者にフィットする求人を紹介するよう努めます。
求職者にとっての転職エージェントとは、求人企業に対してご自身を共に売り込んでくれるパートナーと考えると良いでしょう。
【仕組み解説7】転職エージェントに断られることがある?
無料で利用できる便利な転職エージェントですが、転職エージェントがサービスを提供できないケースもあります。転職エージェントに登録した方の、経歴やスキル、希望条件に合う求人をあつかっていない場合に起こります。
実際、私も30代後半の転職活動では、10社以上の転職エージェントに登録しましたが、うち2社から「ご紹介できる求人案件がございません」といった内容のメールが届きました。
これを受けて、転職エージェントに断られる、登録拒否されると言う方もいますが、正確に言うと転職エージェントは断ったり、登録を拒否したわけではなく、転職エージェントが企業から預かっている求人の中で、求職者に紹介できる求人が無いことを連絡しているのだろうと思います(当事者ではないので推測にすぎませんが)。
職業安定法(第5条の6)により、転職エージェントは原則、求職の申し込みを全件受理しなければならないのですから。
公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者は、求職の申込みは全て受理しなければならない。ただし、その申込みの内容が法令に違反するときは、これを受理しないことができる。
利用するメリットが多い転職エージェントですが、ご自身が応募できる求人をあつかっていないのならば、利用する価値はありません。
このようなこともあるので転職エージェント利用にあたっては、業種や職種、年代、地域など、各転職エージェントの得意・不得意といった特徴を知っておくことが大切です。
当サイトでおすすめする転職エージェントの特徴については、次の記事でご確認いただけます。
紹介できる求人がないと言われると、自分の価値を否定されるようで少しショックですが、その転職エージェントに限っての話なので気にしないようにしてください。私もその後、別の転職エージェントを利用して転職しています。
このような連絡で動揺する時間はもったいないです。新しい転職エージェントの利用を検討しましょう。
あとがき:転職エージェントの仕組み【無料の理由、転職支援の内容、紹介求人の特徴など7項目から解説】
この記事では、次の7つの項目から、転職エージェントの基本的な仕組みを解説しました。
- 転職エージェントが提供する転職支援サービスとは?
- 転職エージェントが紹介する求人の特徴とは?
- 転職エージェントのキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーの役割は?
- 転職エージェントの運営体制は?
- 転職エージェントを利用するには?
- 転職エージェントが無料で利用できる仕組みとは?
- 転職エージェントに断られることがある?
記事を読んだら、転職エージェントがご自身に向いているサービスか整理して、転職エージェントの利用を判断してみてください。
最後にこの記事と同じ、「転職のノウハウ、知識」に関する記事をご紹介します。
転職活動でたくさんのチャンスに恵まれますよう、お祈りいたします!